問題
A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する記述は、民法の規定および判例に照らし、正しいか。
設問
DがA、BおよびCに無断で甲土地上に乙建物を建てて甲土地を占有使用している場合、Aは、Dに対し、単独で建物の収去および土地の明渡しならびに土地の占拠により生じた損害全額の賠償を求めることができる。
解答
×誤り
共有物の妨害排除請求や返還請求は保存行為であり、共有者各々が単独ですることができるため「単独で建物の収去および土地の明け渡し」についてはできる。
他方、「土地の占拠により生じた損害全額の賠償」は、損害賠償を求める場合、自己の共有持分の割合についてのみ行使すべきとされ、他の共有者の持分を含めた全額の賠償を請求することはできない。(最判昭41.3.3)
よって誤り。
問題
A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する記述は、民法の規定および判例に照らし、正しいか。
設問
Eが、A、BおよびCが共有する乙建物をAの承諾のもとに賃借して居住し、甲土地を占有使用する場合、BおよびCは、Eに対し当然には乙建物の明渡しを請求することはできない。
解答
○正しい
共有者の一部の人Aから、共有者間の協議なしで共有物を占有使用を承認された第三者Eは、占有使用を承認しなかったB、Cに対し、共有物を独占して占有する権原を主張することはできないが、実際にしている占有が、占有を承認したAの持分に基づくものと認められる限度で、共有物を占有して使用する権限があるため、Eの占有使用を承認しなかったB、Cは、第三者Eに対して、当然には共有物の明渡しを請求できない。(最判昭63.5.20)
よって正しい。
問題
A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する記述は、民法の規定および判例に照らし、正しいか。
設問
Fが賃借権に基づいて甲土地上に乙建物を建てた場合において、A、BおよびCが甲土地の分割協議を行うとするときは、Fに対して分割協議を行う旨を通知しなければならず、通知をしないときは、A、BおよびCの間でなされた分割の合意は、Fに対抗することができない。
解答
×誤り
共有物について権利を有する者F、及び各共有者の債権者A、B、Cは、自己の費用で、分割に参加することができる(260条1項)が、債権者A、B、CはFに対して「分割協議を行う旨を通知しなければならない」義務はなく、通知しなかったことで「分割の合意はFに対抗することができない」ということもない。
他方、分割協議への参加の請求がFからあったにもかかわらず、Fを参加させずにA、B、C間で分割をしたような場合は、その分割は、その請求をしたFに対抗することができない。(260条2項)
よって誤り。
問題
A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する記述は、民法の規定および判例に照らし、正しいか。
設問
Aが乙建物を所有し居住している場合において、Aが、BおよびCに対して甲土地の分割請求をしたときは、甲土地をAに単独所有させ、Aが、BおよびCに対して持分に相当する価格の賠償を支払う、いわゆる全面的価額賠償の方法によって分割しなければならない。
解答
×誤り
共有物の分割方法は、共有物の現物を分割する「現物分割」、共有物を分割することができないとき又は分割によって価格を減少させる恐れがあるとき、裁判所が命ずる「(競売による)代金分割」、設問のようにA1名に単独所有させ(もしくは、数名の共有者に所有させ)他の共有者に持分の価格を賠償させる「(全面的価格)賠償分割」があるが、いずれかの方法で分割すれば良いわけで、全面的賠償分割によって分割しなければならないわけではない。
よって誤り。
問題
A、BおよびCが甲土地を共有し、甲土地上には乙建物が存在している。この場合に関する記述は、民法の規定および判例に照らし、正しいか。
設問
A、BおよびCが乙建物を共有する場合において、Aが死亡して相続人が存在しないときは、Aの甲土地および乙建物の持分は、BおよびCに帰属する。
解答
○正しい
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がない(かつ特別縁故者(内縁の妻・夫など)がいない)ときは、その持分は、他の共有者に帰属する(255条)ため、設問の通りAが死亡して相続人がいない場合、Aの甲土地および乙建物の持分は他の共有者であるB、Cに帰属する。
設問は、特別縁故者などの記載が特にないため、いないものと解釈すればよい。
よって正しい。
問題
A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している。この場合の共有物分割に関する記述は、民法の規定及び判例に照らし、正しいか。
設問
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるから、たとえA・B・Cの間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効であり、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができる。
解答
×誤り
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるが、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない(256条)としている。(言い換えると、5年以下の共有物分割禁止の契約は可能)よって、A・B・C3名による5年間の共有物分割禁止の契約があった場合、その契約は有効であり、5年間は分割請求をできないということになる。
よって誤り。
問題
A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している。この場合の共有物分割に関する記述は、民法の規定及び判例に照らし、正しいか。
設問
Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、これらを一括して分割の対象としてAが甲土地、Bが乙土地、Cが丙土地というように各土地を単独所有とする分割方法をとることができる。
解答
○正しい
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができ(256条1項)、かつ共有物の分割は、共有者間の協議によるが、協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。(258条1項)
裁判による分割は、現物分割、賠償分割、代金分割等の分割方法があるが、いずれかの方法ですればよく、「数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法258条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される。」(最大判昭62.4.22)とする判例もある。
よって正しい。
問題
A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している。この場合の共有物分割に関する記述は、民法の規定及び判例に照らし、正しいか。
設問
Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、乙土地および丙土地については共有関係を解消せず、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができる。
解答
○正しい
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができ(256条1項)、かつ共有物の分割は、共有者間の協議によるが、協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。(258条1項)
裁判による分割は、現物分割、賠償分割、代金分割等の分割方法があるが、いずれかの方法ですればよく、「多数の者が共有する物を民法258条により現物分割する場合には、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残す方法によることも許される。」(最大判昭62.4.22)とする判例もある。
よって正しい。
問題
A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している。この場合の共有物分割に関する記述は、民法の規定及び判例に照らし、正しいか。
設問
Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、Aの申立てがあれば、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、BおよびCに対してAから各自の持分権の価格を賠償させる方法をとらなければならない。
解答
×誤り
判例では「当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許される。」(最判平8.10.31)とされている。
設問は、全面的価格賠償を「とらなければならない」としているが、現物分割、賠償分割、代金分割いずれかの方法ですればよく、全面的価格賠償に限定している言い回しのため誤り。
よって誤り。
問題
A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している。この場合の共有物分割に関する記述は、民法の規定及び判例に照らし、正しいか。
設問
甲土地、乙土地および丙土地についてのBおよびCの共有持分権がDに譲渡された場合には、その旨の移転登記がないときでも、Aは、BおよびCに対しては甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできない。
解答
×誤り
不動産物権変動の対抗要件は登記。
DがBおよびCから共有持分権が譲渡されたとしても、移転登記がされていないため、Dは第三者であるAに所有権の取得を主張できない。
ゆえにAは、依然B、Cに分割請求をすることになる。
「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」(256条1項)のだから、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできるといえる。
よって誤り。
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